魚市場の歴史と
現状の課題について
人々の食生活を衛生的に、そして安定して支えてきた市場は、
自由化の中でその数を減らしている。
●おさかな市場の歴史
江戸時代、市と言われる物々交換の場が制度化され「市場」となりました。明治大正と時代が進む中で、衛生面に留意し、秩序良くお魚を流通させる為の機能として「中央卸売市場法」が制定されました。市場は迅速、公正な取引を行い、需給調整を見て価格を安定させの台所としてを支える役割を担ってきました。
ところが、簡便性の時代にあって「直接取引」や「6次産業」が進み、市場の流通量は50%以下に減少しています。更に、市場法の改正で自由化が進むと、秩序が崩壊した市場間同士で過当競争になり、市場の数自体も減少傾向にあるのが実情です。
●卸売市場の構造について
市場は、下の図のように大きく分けて「中央卸売市場」「地方卸売市場」の2種類があります。中央卸売市場は、都道府県が開催しており、農林水産大臣の認可の元、開かれている市場です。地方卸売市場は、都道府県知事の許可の元で開かれていて、協同組合や地方団体などが運営しています。
市場は、私達の日常生活においてなくてはならない生鮮品などを全国はもちろん、 外国からも集荷しています。 また、 「せり」や「相対取引」 などにより公平な価格を決定し、消費者の皆様へ安定して供給するという生鮮食料品の流通において基幹的・中心的な役割を担っています。
これらが『市場法』により守られ、市場は大変重要な位置づけにありました。
ところが、時代が変わり、生活・行動様式の劇的な変化(デジタル化)等により、市場は、当たり前のように物が集まり、お客様から買いにきて頂ける場所ではなく自分たちで全国の良い商材を探し、自分たちで販路を拡大しなければならない時代となったのです。市場を守ってきた【市場法】も以下を撤廃し、市場自体が過当競争化しています。
だからこそ、
クラハシはいち早く仲卸機能を包含し、直接実需者(スーパーマーケット等)に卸す仕組みを構築、消費者の声を活かした情報を産地やメーカーに提供し、産地やメーカーの商品情報を、実需者のニーズにお応じた形で提供する仕組みを大切にしています。まさに、市場こそ産直なのです。
■場外直接取引が抱える課題
規制緩和により、市場を通さない直接取引が増えていますが、市場等の中間流通業者を通さない直接取引が抱える課題も多くあります。中間流通業者を通さない、6次産業もIT化も大切なテーマですが、生鮮品の取り扱いは品質面、スピード、加工技術等困難な点が多々あり、色々な課題が浮き彫りに。
IT化、仕入合理化の為、6次化や直接取引が推進されるも・・・
- 取引先を増やすだけで、本当に効率的と言えるのか?
- 生産者においては選別、仕分けなどの経費が増加してしまう
上に、欠品や商品の偏りも発生します! - 要らないと言われたお魚は、結局市場へ出荷されます!
- 残念ながら余り物には良い値段はつきません。
- これで本当に収益UPにつながるのか?
●スマート市場
第四次産業革命を受け、弊社でもスマート市場について、数多く研究して今に至りますが、資源管理の問題や業態別のニーズのアソート対応の難しさ等、多くの課題があります。技術は素晴らしくとも、ただ魚を右から左に流すだけの仕事ではなく、お客様のニーズに応じて魚の形を変える(加工等)手順を考えると簡単にITだけで取引する事は難しいのが実情です。
■市場は機能集約を図り、産地支援と販売企画提案が要
■市場機能は絶対に重要である
市場は、進化こそ欠かせませんが、生産者、メーカーから大量に商品を入荷し、スーパー、外食、等のニーズに応じ、出荷しています。市場機能の重要性は、単純にその機能を除外することが出来ない大きな意義があり、需要と供給を最適に整え、安定供給するために欠かせない機能なのです。
この安定供給へのバランス設計を行っているのが市場機能であり、
まさにクラハシの機能なのです。
水産は、デジタル化が遅れています
市場の機能こそをデジタル化し、
水産流通を変革していく!
市場不要論でも、技術革新をそばむ、
おさかなという素材の難しさと多様な業務
●デジタル化の課題
1.生鮮品は実際に目で「見て」判断する事が求められる
一見効率的に見える、デジタル市場やデジタル競りではありますが、人間には「主観」があるので、特に天然の魚等の場合、形状が決まった規格品にはなり得ないので、「思ったのと違う」と評価されクレームとなるケースが多発してしまうのです。
2.生産者対応、販路対応等の細やかな御用聞きフォローが必要
ITといえば聞こえは良くかっこいい仕事と想像されがちですが、市場の仕事は生産者から荷を預かる深夜作業から始まり、相対作業や買い付けを行うだけでなく、商品のピッキングや梱包を行い、〆時間までにお届けする事が重要です。こうした作業を通じて、仕入先のみならず、販路先の信頼とニーズの再確認を行う事で「量の流通」が実現できるのです。
3.生鮮品は、結局集荷力とアソート力が求められる
水産生鮮品は特に、ただECサイトで右から左にお魚を販売するだけではそもそも、量は売れない時代なのです。あらゆる業態別販路のお客様の多様なニーズを捉え、適したサイズや、フィレ、ロインといった指定加工形態での供給が必須となります。
市場(卸売)が寧ろ、
時代に必要とされる時代に
「そうは問屋が卸さない!」卸売事業者は今、
流通のリーダ―的役割を見直されつつある
●卸機能は無くならない!
卸売業者は、以下の理由からその重要性が見直されています。
- ①産地・メーカーと小売店、双方のメリットとデメリットを熟知している
- ②業態別の販売チャネルがあり、独自の在庫管理・物流システムがある
- ③欧米と違い、多品種の商品を扱う日本では、卸売機能が必要不可欠
- 産地やメーカーは、商品を一定の量で販売出来、販売予測が立ちやすく、代金未回収のリスクを抑える事が出来ます
- 小売業者は、在庫を多く抱えずとも、必要な商品を、必要な時に、必要な分だけ卸売業者から仕入れる事が出来ます
●デジタル化は寧ろ、市場を主体として行いたい!
機能が複雑な上に人情的取引が多く、更に薄利な日本の生鮮卸売機能を、すべてをデジタルに、システム的に解決する事は不可能です。生鮮品流通は、既存の卸売業者が自ら努力して機能化、効率化を図ることで、ニッチの領域でメーカー、小売りから必然の仕組みとして存在し続けると考えています。